フィリップ王配殿下 ご逝去。

特別、英王室のファンだとか、そういうわけでもないけれど、興味があって以前から王室についてはニュースを見たりしていた。

ロンドンのケンジントン宮殿の周りを歩いたことがあるが、意外と簡素というか小さめだなと思った。
(現在ウィリアム王子ご一家の住居である)


イギリスでは王位の継承は生まれた順番で定められるためジョージ6世の長女であったエリザベス王女が女王に即位した。父王は56歳で亡くなったそうだが、まさかそんなに早く王位を継承することになるとは女王も思われなかっただろう。
既にエリザベス王女にはフィリップ殿下というパートナーがあり、子どもにも恵まれ、父王としてはそれを救いにされていたかもしれない。もし王女が独身のままであったら、誰を配偶者とするかという、王室にとってはある意味最大の家族におけるミッションを見届けることなくこの世を去らねばならなかったのだから。


表立って意地の悪い記事を書くいっぱしのライターはいないであろう。それはまあ、どこでどんな波紋を呼ぶか知れないし。

ただの一個人が、誰も来ない密室で徒然なるままに書く分には構わないだろう。


私は、フィリップ殿下は、イギリス王室にとって、この上ない条件を兼ね備えた存在だったと思えてならない。

①将来女王となるエリザベス王女と年齢的に釣り合いがとれている。

②スポーツに秀で、海軍兵。健康状態が申し分ない。

③容姿端麗、おそらく王女の意に沿わないということにはならないであろうと思われる。

④ヨーロッパの王室の直系で、紛うことなき皇子である。

⑤実家の力はほとんど無いに等しいくらいに弱体化しているが、血統はトップクラス。

⑥同じビクトリア女王の血統でありながら遠戚と言える程よい関係で、近親婚の心配がない。

こんなにもイギリス王室に都合が良い相手は世界中どこを見渡してもいなかったであろう。王室の関係者としてはかなり早い段階で目をつけていたかも知れない。
初対面が女王13才、殿下18才。
あわよくば、と仕組まれていた可能性もある。

殿下はおそらく、他国の王室からも『将来の王女の配偶者に』と目されていたと思われる。
血筋はこの上なく素晴らしいし、結婚にあたってうるさく条件をつけてきそうなバック(実家)は無いに等しい。たとえ王位につけない立場で王女の配偶者に迎えることになったとしても、最終的には文句を言えるような状況ではないのだから。

しかし、最も殿下を王女の配偶者に!と望んだのはやはり英王室ではないだろうか。まるで英王室のために誂えたように条件を満たしていたのだから。


女王が国内の身分の高い公爵や侯爵の男性貴族と結婚するというのも無いではないが、それだと面倒な外戚が増える。それに、王が結婚するなら公爵令嬢でも男爵令嬢でもいいが、女王の相手となると身分は同等、つまり他国の王族、もっと欲を言えば直系の王族がベストだ。そうでないとパワーバランスがとれない。男性王族の身分の方が女性王族側より高いというのがやはり基本だ。しかもこの場合は女王(トップ)の配偶者なので、高すぎても低すぎてもいけないという、かなり難しい条件をクリアしなければならない。

いつ紛争が起こるか分からないという不穏な世界で、後ろ盾のしっかりした実家を持つ王族男性と結婚するのはこれまた危険だ。男性の実家である国と戦争にでもなったら、それこそ面倒極まりないのだ。

それに、フィリップ殿下の叔父であるギリシャ国王が王位を追われた時、赤ん坊だった殿下を含むマウントバッテン一家を軍艦で救出したのは当時のイギリス国王ジョージ5世だった。命を助けて貰った立場上、なにか要求された場合Noとは言えない身分だっただろう。

フィリップ殿下は本当に壮絶な人生を歩んで来た王族だ。
自らは立派な王家の直系でありながら、クーデターなどの紛争によって生まれながらに王位を追われ、まるで漂流するかのように子供時代を過ごさねばならなかった。

大英帝国の力の前に半ば膝を折るようにして名を捨て信仰を捨て(改宗した)、自らを立たせる唯一の場であった海軍からも、女王の即位と共に離れなければならなかった。何もかもを、手放して、英王室でただ『女王の夫』であり続けなければならない。。。その葛藤は想像を絶するものであっただろう。


私なら、こう思ったかもしれない。

どうせなら、最も高貴な『夫』になって見せよう。
どこかの貴族の夫でも、王族の夫でもなく、世界の大英帝国の、最も高貴な夫に。

女王との愛が、王配殿下にとって真実であり、ただ手放すばかりではなく、それに匹敵するほどの何かを得た生涯であったことを願ってやまない。